全リポジトリのREADMEとコミット履歴、それに作業記録(ハブのログ)を読んだうえでの、構造的・批評的評価。月次更新。 対象は主に10月の1か月。10月版(改訂版)の宿題を先に採点し、そのあとで今月の性格を書く。
まず量から書く。10月の作業記録は 約830件(1件1ファイルに切り替えた10月3日以降だけで767件)。この1か月で新しく作られたリポジトリは、ローカルで数えて 30本を超える。コミット数の上位は layerlab(141)、molecular-pharmacology-lab(74)、legacy-distortion(79)、audio-audit(57)。月の終わりには、ローカルAI専用の4台目の機械(minisforum)がハブに加わった。
量は本題ではない。本題は、AIが座る席が変わったことだ。
10月版で私は、このアカウントの本質を「AIの所見を一次資料として読み、現物で仕分けるようになった」と書いた。AIは査読者の席にいた。11月版では、こう書き直す。AIは査読者の席から、採点される弟子の席に移った。10月28日に作られたリポジトリの名前が、そのまま tool-apprentice(道具の弟子)である。ローカルAIに自作の道具とビルドを覚えさせ、覚えたかどうかを事前登録した基準で採点する。
そして、もう一つの変化がある。10月版の課題の2番目は「仕分けの規則が一人の注意に依存している」だった。今月、その規則の一部が、作者の注意から道具の中へ移った。
10月版は3つの宿題を置いた。
- 査読の独立性 → 半分だけ進んだ。 査読者を独立させる方向ではなく、査読者の当たり外れを数える方向へ進んだ。ローカルの大型モデル Strata(125B MoE)にコードを査読させた回は、答えを見る前に既知の問題12件を書き出してから比べている。結果は 当たり0・はっきりした誤り2。DeepSeek の所見15件は、測って 10件が当たり。査読者は、仕分けられる対象から成績のつく対象になった。ただし、このレビューを書いている私が、その採点の道具を作り、採点もしている構図は変わっていない。
- 査読の記録の置き場所を一か所に → 未達。 記録は今月も道具ごとに生まれた。Strata の問題台帳(
problems.py・46件)、tool-apprentice のRESULTS-P3.md、LayerLab のdocs/ai-local-test.md。どれも中身は良いが、場所はばらばらのままだ。 - 「耳が要る」の台帳 → 形を変えて部分的に。 台帳はできていない。ただし記録の書き方が変わった。midi-compose-line では「聴取は未判定」とコミットし、次の記録で「聴取:意図どおり」と決着させる対が、何十組も並んでいる。台帳ではなく、ログの対として残っている。一方で、プロジェクト一覧133行のうち 36行がまだ「試聴待ち」「感想待ち」 で止まっている。耳の側の処理能力が、作る側の速さに追いついていない。
この線は、褒め言葉を一つも生まない形で進んだ。
Strata のビルド試験。 クラウド側が書いたお手本(弦と駒のストリングマシン)と同じものを、ローカルのモデルに書かせる。最初は「ビルドは通るが弦は鳴らない」。4時間の耐久を4回回し、試験の側の穴を2つ塞ぎ、レビューのサイクルを入れて、ようやく「13/13」に届いた。そのあいだに分かったのは、長い出力で、ローカルのモデルが堂々巡りに落ちることだ。コード査読の回では、2,069文のうち違う文は13しかなく、「これは正しい。」が515回くり返された。
tool-apprentice。 自分で書いたメモ(失敗の記録)を次の回に読ませると、失敗が減るかを測った。drop-modeler では、同じ失敗が 53%→17% に下がった(未見の課題でも効いた)。ところが LayerLab の報告書づくり(P3)では、向きは予想どおりだが 有意差は出なかった(p=0.13〜0.40)。そして記録は、その結果を「メモの効果は有意でない」とそのまま書いている。都合の良いほうの実験だけを残していない。
ここで評価したいのは、判定の基準を先に固定していることだ。「10課題すべてで崩れ0」という合格の定義をユーザーが先に決め、それに届いた周が一度も無いことを、そのまま書いている。
10月版で私は「仕分けが正確だったのは、毎回『式から計算せよ』『褒めるな』と依頼文に書き続けた注意のおかげで、配られた規則ではない」と書いた。今月の LayerLab は、その指摘に道具の形で答えている。
LayerLab(画像合成から始まり、統計・作図・A4の文書・PDFまで組む道具。MCPのツール54個)は、AIに報告書を書かせるとき、次のことを道具の側で強制する。
- 書く数字はすべて、統計ツールの返答か、課題文から来ていなければならない。暗算で統計値を書くな、と道具の説明書きに書いてある。
- 根拠のない「有意」を見張る。 ローカルAIに書かせた文書で、最終稿に残った根拠のない「有意」は、見張りなしで 5/30、見張りありで 0/15。
- 出どころのない数字を一覧にする。 出どころのない数字がある実行は 6/10→0/10。
正直さも記録されている。見張りの比較は Fisher の検定で p≈0.15 で、「向きは一致するが、有意とは言えない」と書いている。有意を見張る道具の効果を、有意と言わずに報告している。 これは今月、一番筋の通った自己言及だった。
今月いちばん読み応えがあったのは molecular-pharmacology-lab(10月17日新設)だ。CYP3A4 の薬物相互作用を、構造(ドッキング)と体内動態の機構モデルの両方から攻め、30ページの報告書を書き切った。
この記録は、自分の誤りを自分の対照が捕まえる場面の連続である。
- フルコナゾールのドッキングが「合格(0.60Å)」した。翌日、配座を自分で生成させると悪化した。そこで 「P2 の合格は、結晶の形を渡したうえで置き場所だけを問う試験だった」と、自分で訂正している。
- 一日中外れ続けた徐放製剤の条件は、機構が足りないのではなかった。同じ日の午後に自分で測った値(放出の遅延0)を、モデルに流していなかった。流したとたん、予言5本中3本が実測の区間に入った。
- 一次資料には6つの条件があり、そのうち2つを写し間違えていた。甘い判定を3度くり返した、とも書いている。
ここから恒久の規則が1本生まれた。「測った値をパラメータへ流す工程を別に持つ。測定と適用は切れ、切れてもエラーが出ない」。パラメータ表に「測った/当てはめた/仮定した」の欄を持ち、仮定の行を定期的に数える。
辛口に言えば、同じ形の失敗が3度出てから規則になった。ただし、3度とも対照が捕まえていて、黙って通った回は記録上ない。その点で、この1か月の失敗の扱いは健全だった。
今月、このアカウントは物を作り始めた。
- ptp-depop-robot:PTPシートから錠剤やカプセルを取り出す、分包の前処理ロボットの構想(5年計画)。1年目は手で押すてこ式の治具。実際の薬(セルセプト、ドパコール)の寸法で受け具と押し具を作り、刷って試し、くぼみを10→15mmに直している。
- tablet-sieve(錠剤を振って直径で分ける篩)、tablet-splitter(割線のない錠剤を一列まとめて半分に切る器具)、drop-modeler(2Dの輪郭を落として積む、AIから使う2.5Dモデラー)、light-section-scanner(中敷きを作るための光切断スキャナー)。
- 道具どうしがつながり始めている。スキャナーの高さマップを drop-modeler が中敷きの凹みにする、という受け渡しの書式(dm-heightmap v1)が、先に文書で決まった。
ソフトウェアの検査の作法が、そのまま物に持ち込まれているのが面白い。KVM の壁掛けホルダーは、試し片を刷って合いを測ってから本番を刷る。手前のタブが根元から折れたので厚みを倍にしたら、平らに刷る向きでは逆効果だった、という失敗まで記録にある。物は、検査を省いた分だけ正直に折れる。
音楽の側も、今月の量は多い。物理モデルの鍵盤4台(PM Piano / PM EPiano / PM Giant Rubber / PM Tubes)が1日で揃って試聴合格した。Legacy Distortion は19機種と、機種どうしのブレンド52組。audio-audit は AES17・CCIR-468・BS.1770 といった規格の物差しを入れ、全製品を測り直した。
ただ、今月の音の側で一番大事なのは、技術ではなくユーザーが言葉にした創作の原則だった。
既存の生き残った手法で新しさを出すのが王道。ランダムの違和感を押し付けるのは新しいとは言わない。
これは、私が「聞き馴染みは新しさと逆向きかもしれない」と書いた見立てへの返答で、記録はその見立てを撤回している。以後、奇妙な変種を新しさとして提案しない、新しさは定番の組み合わせと時間の配分で作る、という方針になった。
もう一つ、DroneWeaver VER1 の試聴でユーザーは 「再現性は重要ではない」 と裁定した。私は「レンダが毎回一致するか」の範囲を精密に詰めていたが、問うべきは「VER1らしさが残っているか」の一点で、それは人が聴かないと分からない。記録は自分の誤りを「正確さは合っていて、測る量が違っていた」と書いている。耳は、AIが精密に測っているものが的外れだと教える。 10月と同じ教訓が、形を変えて戻ってきた。
6月「回路の物理を手で解き、AIの力を借りて音楽の意味を問い直している」。7月「作った道具に対して、反証可能性を要求し始めた」。8月「自分の労働を、道具に清算させはじめた」。9月「道具群を艦隊として運用し、属人性を外しはじめた」。10月「AIの所見を一次資料として読み、現物で仕分けるようになった」。そして11月——
「AIを査読者の席から弟子の席へ移し、規則を作者の注意から道具の中へ移しはじめた。」
課題は3つある。
- 記録の器が、記録の量に負けている。 1か月約830件のログは、セッションの最初に読む手順の上限をとっくに超えている。ハブ自身が「11月30日まで字数の上限を超えても許す」と期限つきで裁定した。11月に予定されている記憶システムの改訂は、このアカウントで一番大事な工事になる。
- 耳の待ち行列。 作る速さが、聴いて決める速さを超えている。一覧の36行が「待ち」のまま。新しく作るより先に、待っているものを聴いて閉じる週があってよい。
- 査読の記録の置き場所(10月からの持ち越し)。
今月の最注目は molecular-pharmacology-lab——自分の「合格」を自分で取り消し、誤りの原因を「機構」ではなく「流し忘れた1つの値」に突き止め、それを全プロジェクトの規則にした。今月のベストラインは、その記録の一文だ。
追いかけてきた衝突は機構の衝突でなく、測っていない1パラメータだった。
難しい理論を足す前に、自分の表を疑う。これは、どの分野でも通じる一文である。
月が替わっても速度は落ちていない。11月3日〜5日だけで、Launchkey Mini 2台で操作する MPC 流のグルーヴボックス(Music Pad Launch・P0〜P4c)、タイムラインで曲を組む自作DAW(SN DAW・着工から1日で v0.0.11、ARA で Melodyne がリージョンを鳴らすところまで)、Sound Canvas 系5基板の音源(RUMOR MODULE)、オールパス連鎖のディスパーサー(5製品へ配布)が並んだ。どれも「試奏待ち」で止まっている。課題2はすでに来月の採点項目だ。
| カテゴリ | リポジトリ | 概要 |
|---|---|---|
| 🔬研究 | llm-committee-decontamination | LLM委員会の丸め病解剖・構造分解・H⊥仮説(公開・反証歓迎) |
| 🔬研究 | knowledge-exchange | 🆕AIが読む知見の束を交換し、同一環境で評価する構想(公開・READMEのみ) |
| 🆕AI | tool-apprentice | ローカルAIに自作ツールとビルドを覚えさせ、事前登録の基準で採点する |
| AI | local-ai-hub | 週報の検証層・ローカルAIの台帳・Strata のビルド試験と監督基準 |
| 投資 | investment-ai-analyst | 6人格委員会×構造トラップ登録簿×射程ゲート(毎朝運用中) |
| 🆕AI | hyogi-gekijo | 評議劇場。史料DBの器と検査・実LLMで裁定席まで通る |
| 🆕薬理 | molecular-pharmacology-lab | CYP3A4 相互作用を構造と機構モデルで。30ページの報告書を書き切った |
| 🆕薬理 | moa-visualizer / oncodynamics-calibrator | 作用機序の3D教材(31ケース187ステップ)/ がん変異の動的構造の較正 |
| 🆕道具 | layerlab | 画像合成→統計・作図・PDF文書(MCP 54ツール)。根拠のない有意と出どころのない数字を見張る |
| 🆕検査 | audio-audit | 音響品質の共通定義。AES17・CCIR-468・BS.1770 ほか規格の物差しで全製品を測る |
| 🆕物 | ptp-depop-robot | PTPから錠剤を取り出す分包前処理ロボット(構想・てこ式治具から) |
| 🆕物 | drop-modeler | 輪郭を落として積む2.5Dモデラー(AIから使う・高さマップから凹み) |
| 医療 | yakukanri | 3マスタ突合+棚卸台帳+立ち入り監査。休日定期の締め切りまで運用 |
| 医療 | setsumei / geppou / master-assist / rx-map | 患者説明文書・調剤室月報・新規薬品登録支援・教育用処方マップ |
| 医療 | PTPCounter / ticket-audit-ocr / rx-tracing | 錠数カウンタ(お薬手帳QR出力)・券面OCR・3点打刻突合 |
| 事務 | csvmini / master-viewer | Excelの無い端末のCSV閲覧・修正(鍵の形 keyform.h を新設) |
| 🆕楽器 | pm-piano / pm-epiano / pm-rubber / pm-tubes | 物理モデルの鍵盤4台。1日で揃って試聴合格 |
| 🆕楽器 | amp-loop / bass-space / anpi-strings / sf2-player | 破れたスピーカー×帰還 / ベース用FDN空間 / アナログストリングス / SoundFont |
| 楽器 | legacy-distortion | 回路図から組む19機種+ブレンド52組・申告レイテンシを実バイナリで検証 |
| シンセ | vst-drone-weaver | VER1/VER2 を同居。VER1 は「再現性は重要ではない」の裁定で試聴合格 |
| 楽器 | paganihands / matryoshka-guitar | 擦弦+WIND / アコギの物理VSTi(MPE) |
| ホスト | vst-testbench | 軽量VST3ホスト→ミキサー構成へ。MPE・AU対応・規格 validator の導入 |
| 🆕橋 | reaper-bridge / wavelab-bridge | AIがREAPER/WaveLabを操作する口(任意スクリプトの口は持たない) |
| 公開 | isekai-yami-shonin | 迷宮都市の商人ゲーム。目的はクリアしないこと |
| 公開 | hearing-loss-simulator | 蝸牛シミュレータ(ガンマトーン・病態層・二言語UI) |
| 🆕遊び | uwyt | 100円買い切りのパズル3本(ロジック/ジグソー/Drone)。iOS実機で試験中 |
| VST艦隊 | parley / calque / strata / terrine / oxide-vst ほか回路シミュ群 | 全艦に説明書+「?」ボタン・プログラム名の1行修正を一斉配布 |
graph LR
%% ── 計算資源 ──────────────────────
GPU1["🖥️ Win機 RTX 5070 Ti 16GB\nVST開発・物理モデル"]
GPU2["🐧 aibox RTX 5060 Ti×2 32GB\n定時ジョブ・委員会・Strata"]
MINI["🧠 minisforum 128GB\n長いエージェント作業(4台目)"]
A1["🖨️ 3Dプリンター A1\n治具・篩・ホルダー"]
WORK["🏥 職場PC\n棚卸・月報・マスタ・説明文書"]
%% ── AIを弟子にする ─────────────────
subgraph APP ["🎓 AIを弟子にする(採点される側)"]
TA["tool-apprentice\n事前登録の基準で採点"]
STR["Strata ビルド試験\n問題台帳46件"]
end
%% ── 規則を道具の中へ ────────────────
subgraph RULE ["📏 規則を道具の中へ"]
LL["layerlab\n有意の見張り 5/30→0/15"]
AA["audio-audit\n規格の物差し"]
end
%% ── 研究 ─────────────────────────
subgraph SCI ["🔬 研究"]
MPL["molecular-pharmacology-lab\n測定と適用は切れる"]
MOA["moa-visualizer / onco\n構造の教材と較正"]
DECON["llm-committee-decontamination\n公開研究"]
end
%% ── 音 ───────────────────────────
subgraph PM ["🎻 楽器・VST艦隊"]
FLEET["JUCEプラグイン30本超\npm-* 4台・LD 19機種"]
end
%% ── 物 ───────────────────────────
subgraph OBJ ["🔩 画面の外の物"]
ROBOT["ptp-depop-robot\nてこ式治具→電動プレス"]
DM["drop-modeler\n高さマップ→凹み"]
SIEVE["tablet-sieve / splitter"]
end
%% ── 現場 ─────────────────────────
subgraph FIELD ["🏥 現場ツール"]
YAK["yakukanri\n休日定期・棚卸"]
PTPC["PTPCounter\nお薬手帳QR"]
CSV["csvmini\n鍵の形 keyform.h"]
end
%% ── 接続 ─────────────────────────
MINI --> TA
GPU2 --> STR
TA -->|"覚える対象"| LL
TA -->|"覚える対象"| DM
STR -.->|"堂々巡り・当たり0"| TA
LL -->|"数字の出どころ"| MPL
AA -->|"測定報告のPDF"| LL
AA --> FLEET
GPU1 --> FLEET
MOA -->|"接触・水素結合の定義"| MPL
MPL -.->|"規則: 測った値を流す工程"| AA
A1 --> ROBOT
A1 --> SIEVE
DM --> ROBOT
WORK --> YAK
WORK --> PTPC
WORK --> CSV
PTPC -.->|"PTP認識の土台(候補)"| ROBOT
classDef done fill:#2d5a27,color:#fff,stroke:#4a9640
classDef inprogress fill:#1a3a6b,color:#fff,stroke:#2563eb
classDef infra fill:#2d2d2d,color:#fff,stroke:#666
classDef dist fill:#5a4a1a,color:#fff,stroke:#c9a227
class FLEET,YAK,CSV,DECON,MPL done
class TA,STR,MOA,ROBOT,DM,SIEVE,PTPC inprogress
class GPU1,GPU2,MINI,A1,WORK infra
class LL,AA dist
凡例: 🟢 稼働済み・書き切った 🔵 開発中・実地投入中 🟡 規則を持つ共通の道具 ⬛ 計算資源・機械
過去のレビュー: 2026年6月版〜10月版(10月版は 2026-09-30 の初版と 2026-10-07 の改訂版)はコミット履歴参照。この11月版は 2026-11-05。